核酸ストーリー

核酸研究のはじまり

核酸研究の歴史は長く、スイスのフリードリッヒ・ミーシャーが膿の白血球から未知の物質を発見した1869年まで遡ります。その物質は1871年に「ヌクレイン」と名付けられました。翌1872年にはミーシャーはライン川を遡ってくるサケの白子から大量のヌクレインが取れること、そのヌクレインがプロタミン (これもミーシャーが発見して名付けました) という塩基性タンパクと結合していることも発見しました。

ここにサケの白子由来の核酸研究の歴史が始まったとみることができます。
この研究はミーシャーの弟子であるリヒャルト・アルトマンに引き継がれ、彼は1889年にヌクレインからほぼ完全にタンパク質を取り除き、残った物質を核酸 (nucleic acid)と命名しました。これが現在知られているDNAです。

こうした研究は更に引き継がれ、ミーシャーの研究室の後輩であるアブレヒト・コッセルはヌクレインを化学分析し、4種の塩基とリン酸と糖で出来ていることを解明して1910年にノーベル医学・生理学賞を受賞することに繋がりました。

フリードリッヒ・ミーシャー
二重らせん構造

核酸に関連してノーベル賞を受賞する研究者はこれ以後も続きます。一番有名なのは、ワトソンとクリックによるDNAの二重らせん構造の解明でしょう。彼らは1953年に発表した、その功績で1962年にノーベル医学・生理学賞を受賞しました。

しかし、前述のコッセルの4種の塩基の発見から一足飛びに二重らせん構造の解明に進んだわけではありません。まず1944年にオズワルド・エイブリーが、核酸(DNA)こそが遺伝物質であることを発見します。その後エルヴィン・シャルガフが遺伝子(DNA)の構造解析を試み、1950年にDNAの中のAとT、CとGが同じ数ずつ存在することを突き止めました。そこから3年を経て、ジェームズ・ワトソンとフランシス・クリックがDNAはAとT、CとGが対になった二重らせん構造をしていることを突き止めるのです。

さらに1957年にクリックは、DNAの情報をRNAが転写・翻訳して体内で必要なタンパク質を合成するという中心的な原理「セントラルドグマ」を提唱しました。

こうして多くの研究者によって核酸が遺伝に関与していることと同時に、その構造が明らかになっていきました。

日本の核酸研究

ワトソンとクリックが二重らせん構造を解明した1951年(昭和26年)には、我が国初の核酸についての書籍「核酸及び核タンパク質-理化学・生物学・医学-」が出版されています。
東京大学理工学部の安藤鋭郎(アンドウ トシオ)教授ら当時の日本のトップクラスの研究者16名が執筆されたものを、名古屋大学の江上不二夫教授が編集されたものでした。

また、安藤鋭郎教授は1961年(昭和36年)に、DNA結合たんぱく質であるプロタミンについて、その化学構造を世界に先駆けて明らかにし、生物学的役割や薬剤・食用としての利用についても言及されています。

一方、江上不二夫教授は、酵素リボヌクレアーゼT1を発見しました。この発見は1968年にノーベル医学・生理学賞を受賞したロバート・W・ホリーらのトランスファーRNAの一次構造解明に大きく貢献しています。

その後も多くの日本人研究者が核酸分野の研究で歴史的な成果を出しています。

我が国最初の核酸についての書籍
「核酸及び核タンパク質-理化学・生物学・医学-」
フォーデイズ品質管理センター内に展示

生命科学の進歩

2003年にはヒトの全遺伝情報を解き明かすことを目的に1990年から開始された国際的な「ヒトゲノムプロジェクト」が完了しました。ヒトをはじめとする多くの生物種の全塩基配列が決定され、ヒトの遺伝子は約21,000個でゲノム全体の約2%に過ぎないことなどがわかりました。プロジェクトで得られた膨大なゲノム情報は、その後のポストゲノム研究へとつながり、その研究成果は核酸医薬、オーダーメイド医療、iPS細胞による再生医療、ゲノム編集技術による遺伝子治療といった最先端医療にも応用されています。

核酸の栄養学的研究

核酸研究は生命科学の中心テーマとして進められてきました。一方、食事に含まれる核酸を食べたらどうなるかという栄養学的研究はあまり注目されてきませんでした。しかし1970年代後半、アメリカで食事と生活習慣病の関係が報告され、食品に含まれる機能性物質の研究が盛んに行われるようになった頃から本格化していきます。

1974年には加齢に伴う体内の核酸量(RNA)の減少が報告されました。

世界的な核酸栄養研究の成果としては、1989年に開発された核酸が入った経腸栄養剤「IMPACT®」があげられます。また当時、粉ミルクで育った赤ちゃんでは母乳で育てた赤ちゃんに比べてアレルギー疾患や下痢などが頻発していたことから研究が進められ、母乳に豊富に含まれていて、粉ミルクには僅かにしか含まれていない成分のひとつが核酸であることがわかり、90年代には日本でも粉ミルクに核酸(ヌクレオチド)が配合されるようになりました。

フォーデイズの核酸研究

このように核酸の研究は世界のその時々の最先端の研究者・研究機関によって連綿と続けられて現在に至り、その裾野を大きく広げています。

そして研究の進展により核酸を食べることが健康づくりにつながり健康長寿に役立つ可能性への期待が高まる中、フォーデイズも他に類を見ない核酸栄養のリーディングカンパニーとして核酸研究の発展に努めてきました。

ライフ・サイエンス研究所をはじめ、東京大学や昭和大学等の研究機関とも共同研究を行い、核酸の栄養学的な機能や安全性についての分子栄養学的なアプローチで、基礎研究を行ってきました。その結果としてこれまでにナチュラル DN コラーゲンドリンク関連の特許の他に、核酸の予防医学的可能性に関する特許も取得するに至りました。

ライフ・サイエンス研究所との共同研究室として、2019年には「次世代核酸ラボFD」を東京農工大学に設立し、核酸の新たな分析方法、素材としての機能性に関わる評価法に至るまで広範な研究を行っています。

さらに、新たな時代の核酸のパイオニアとなるべく、2020年には、次世代核酸ラボFDと東京農工大学との共同研究講座として「フォーデイズ次世代核酸研究講座」を設置しました。

核酸研究は、生物の生命に直結した研究であり、フォーデイズは来るべき超高齢化社会に貢献すべく、栄養としての核酸の新たな可能性について、さらなる研究を重ねてまいります。